投稿日: 2025年05月10日 葬儀で見かける「籠盛り」とは?供花との違いや中身の意味を知る
葬儀や通夜の場で、花とは別に果物や乾物、缶詰などを美しく盛りつけた「籠盛り(かごもり)」というものを見かけたことはありませんか?
華やかなようで控えめ、しかもどこか懐かしさを感じさせるその姿には、故人への祈りや、残されたご遺族への思いやりが込められています。
この「籠盛り」について、何が入っているのか、どんな意味があるのか、そして供花との違いなどを、わかりやすくご紹介します。
■ 籠盛りとは何か
籠盛りとは、果物やお菓子、乾物、缶詰などの食料品をかごや台の上に美しく盛りつけた、**故人への供物(くもつ)**です。
読み方は「かごもり」または地域によっては「かござかり」とも呼ばれます。
通夜や葬儀の祭壇のそば、または受付近くに並べられることが多く、参列者や関係者が贈ることで、故人の冥福を祈ります。
単なる飾りではなく、「あの世でも困らないように」「ご遺族の生活を支える気持ちで」という、日本ならではの優しさが込められた文化です。
■ 籠盛りには何を入れる?
籠盛りの中身には、地域や宗派による差が多少ありますが、次のようなものがよく使われます。
◯ 果物(フルーツ盛り)
りんご
みかん
メロン
バナナ など
華やかで見栄えもよく、痛みにくい果物が選ばれることが多いです。宗派を問わず使いやすく、季節の果物で彩りを加えることもあります。
◯ 乾物・缶詰
昆布、干し椎茸、煮干しなどの乾物
フルーツ缶、ツナ缶などの保存食
保存が利くため、葬儀後にご遺族やお寺へお返し(おさがり)として渡すことも想定されます。
◯ 菓子類(和菓子・洋菓子)
煎餅や羊羹などの個包装された和菓子
クッキーやゼリーなどの洋菓子
法要後の分配のしやすさも重視されます。日持ちするものが好まれる傾向にあります。
■ 籠盛りと供花の違い
葬儀でよく見かける「供花(きょうか)」は、生花を供えることで故人を悼む形式のひとつです。では、籠盛りとはどのような違いがあるのでしょうか。
まず中身についてですが、供花は基本的に白や淡い色を中心とした生花を用います。一方、籠盛りは**食料品(果物や乾物、缶詰、お菓子など)**が中心です。
意味合いにも違いがあります。供花は「場を荘厳にし、故人の霊を慰める」視覚的・精神的な供養であるのに対し、籠盛りは「故人があの世で困らないように」「ご遺族への生活支援の気持ちを込めて」といった、より実用的な祈りの形です。
また、終了後の取り扱いにも違いがあります。供花は通常そのまま処分されることが多いですが、籠盛りの品は「おさがり」として分配されたり、寺院やご遺族に贈られるなど、再利用されることを前提にしている場合がほとんどです。
宗教的にはどちらも比較的柔軟に使えますが、供花には宗派ごとのマナーが存在するのに対し、籠盛りは地域文化の影響が強く、特に東日本では古くからの習慣として親しまれています。
■ 籠盛りの地域性と近年の変化
かつては東北や北関東などを中心に籠盛りが盛んでしたが、近年では都市部や関西地方でも見られるようになりました。
また、コンビニや葬儀社が「供物セット」として取り扱うケースも増え、以前よりも選びやすく、送りやすくなっています。
ただし、葬儀を行う地域や会場、宗派の意向によっては、籠盛りを受け付けていない場合もあるため、事前の確認が重要です。
■ おわりに
葬儀における「籠盛り」は、単なる贈り物ではなく、故人を想い、遺族を気遣う心が形になったものです。
華やかさよりも実用性と気持ちが重視される、日本ならではの優しさの文化とも言えるでしょう。
供花か籠盛りか、あるいは香典か──形式に迷うこともありますが、何より大切なのは「相手を想う気持ち」。
その気持ちに寄り添うかたちで、真心のこもった供養を選びたいものです。